意思能力のない者の行為(改正民法第3条の2)(大審院明治38年5月11日判決)/二重効の問題をわかりやすく

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意思能力のない者の行為

民法判例百選Ⅰ[第8版] No.5
意思能力のない者の行為
(大審院明治38年5月11日)

意思能力のない者の行為は無効である。

当然といえば当然のことを明言した、とても古いカタカナ文の判例です。

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意思能力とは

私的自治の原則(自己の意思に基づいてのみ権利を取得し義務を負担する)のもと、法律行為をするには、意思表示の時に意思能力が必要とされます。

すなわち、法律行為とは、「意思表示を要素とする法律要件(権利の発生・消滅・変更の原因である事実)」をいいます。

意思表示を要素」としている法律行為が有効であるためには、「有効に意思表示をする能力」即ち、意思能力が必要なことは当然のことといえます。

*-意思能力とは、「自分の行為の結果を弁識し判断することのできる精神的能力」をいう。

とか、難しく定義されてますけど、簡単にいえば、

意思能力とは、「有効に意思表示をする能力」のことです。-*

言い換えれば、

「意思能力のない者の行為は無効である。」

民法に明文はないものの、当然のことである。そう明示した判例です。

2020年4月1日施行の改正民法により明文化されました。

第二節 意思能力
第三条の二 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする

いわゆる二重効の問題

また、判例は、制限行為能力者制度との関係について、次のような趣旨のことをいっています。

「制限行為能力者のした行為(取り消し可)であっても、行為時に全く意思能力がなかったときは、取り消しの意思表示を待つまでもなく、法律行為は当然に無効である。」

いわゆる〈二重効の問題〉ですね。

取り消しも無効も、どちらも「法律行為の効果発生を否定する法律上の根拠付け」にすぎません。行為者保護のため、両方認めて良い、とされています。

どちらを主張しても自由ですよ、というお話です。あえて、立証の難しい、「意思能力がなかった」という主張をするというのも、それはそれで自由ですよ、ということです。

以上、今回は、一言でおわってしまうような、シンプルな、超基本の判例でした。

なお、債権法改正の議論のなかで、判例の考え方を明文化する方向が示されているようです。

(上記のように2020年4月1日施行の改正民法により明文化されました)

今回は、以上です。

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