親族が亡くなりました。
私は相続人なの?
今回は、そんなお話です。
◇
photo credit: QUERHOCH waiting for the sunset via photopin (license)
◇
私は相続人?
《誰が相続人か?》を決める手順については、民法に条文があります。
⚪︎
〈妻は別格の存在〉です。
(配偶者の相続権)
第八百九十条 被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第八百八十七条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。
「常に」とありますね。
配偶者は必ず相続人となります。
夫婦の絆は最優先。別格で相続権をもつのです。
では、
〈別格の存在である配偶者以外の親族〉については、どうなるか?
というと、順位がついています。
(子及びその代襲者等の相続権)
第八百八十七条 被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。←代襲相続
3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。←再代襲相続
(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
第八百八十九条 次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
二 被相続人の兄弟姉妹
2 第八百八十七条第二項の規定は、前項第二号の場合について準用する。←代襲相続
第一順位⇒子
第二順位⇒直系尊属(親、祖父母)
第三順位⇒兄弟姉妹
となっています。
ここで注意することは、
「順位に従って相続人となる」ということ。
889条をみると、
「次に掲げる者(直系尊属と兄弟姉妹)は、第八百八十七条の規定(子の相続権)により相続人となるべき者がない場合には」「順位に従って相続人となる」とありますね。
「子がない場合に初めて親が相続人となり」
「親&祖父母もない場合に初めて兄弟姉妹が相続人となる」のです。
「第一順位の子がいるとき」は、そこでオシマイ。親や兄弟姉妹の出る幕はありません。親や兄弟姉妹に相続権はありません。
繰り返しますね。
〈配偶者以外の親族〉には順位がついていて、
「第一順位の子がいる場合」は、子でオシマイ。
「子がいない場合」に初めて第二順位の親が相続人となります。
さらに、「親&祖父母もいない場合」に初めて第三順位の兄弟姉妹が相続人となるのです。
つまり、「兄弟姉妹が相続人となる」のは、亡くなった被相続人に「子がなく」て、かつ、「両親&祖父母もいない」場面なのです。
◇
以上が、相続の基本中の基本、《相続人は誰と誰?》という話でした。
付け足すとすれば、
「子が先に亡くなっていて、子の子(孫)がいた」場面では、「子の代わりに孫が相続人となる」。
いわゆる、「代襲相続」。
第八百八十七条 被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。←代襲相続
3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。←再代襲相続
2項ですね。
子と子の子(孫)を一体とみて、子が相続するはずだったものを孫に相続させるというもの。
ここでも、第一順位の子の代わりに孫が相続人となるわけですから、これでオシマイ。第二順位の親がや第三順位の兄弟姉妹が出る幕はありません。
ちなみに、
〈代襲相続〉があるのは、子(887条2項)と兄弟姉妹(889条2項)だけ。
さらに、
〈再代襲相続〉があるのは、子(887条3項)だけ。
細かいですけどよく問われます。
以上を前提に、具体的な場面ごとに、みていきましょう。
□ □ □
亡くなられたのは誰ですか?
◯夫(又は妻)です
➡あなたは相続人です《配偶者の相続権》
◯父(又は母)です
➡あなたは相続人です《子の相続権》
◯祖父(又は祖母)です
➡相続人となるべき「祖父(又は祖母)の子」つまりあなたの父(又は母)が既に亡くなっている事情があれば、あなたは〈代襲相続人〉です《孫の相続権》
◯子です
➡相続人となるべき「お子さんの子」つまり孫がいない事情があれば、あなたは相続人です《親の相続権》
◯孫です
➡相続人となるべき「孫の子」つまり曾孫がいない、かつ、「孫の親」つまりあなたの子も既に亡くなっている事情があれば、あなたは相続人です《祖父母の相続権》
◯兄弟姉妹です
➡相続人となるべき「兄弟姉妹の子」つまり甥(又は姪)がいない、かつ、「兄弟姉妹の両親(かつ祖父母)」つまりあなたの両親(かつ祖父母)も既に亡くなっている事情があれば、あなたは相続人です《兄弟姉妹の相続権》
◯おじ(又はおば)=親の兄弟姉妹です
➡相続人となるべき「おじ(又はおば)の子」つまりいとこがいない、かつ、「おじ(又はおば)の両親(かつ祖父母)」つまりあなたの祖父母(かつ曾祖父母)も既に亡くなっている事情があり、かつ、「あなたの親」も既に亡くなっている事情があれば、あなたは〈代襲相続人〉です。《甥(又は姪)=兄弟姉妹の子の相続権》
◯甥(又は姪)=兄弟姉妹の子です
➡あなたは相続人ではありません。《おじ(又はおば)の相続権》
◯舅(又は姑)=配偶者の親です
➡あなたは相続人ではありません。《子の配偶者の相続権》
◯いとこ=おじ(又はおば)の子です
➡あなたは相続人ではありません。《いとこの相続権》
□ □ □
私の相続分は?
で、相続人は決定されました。
では、《各相続人の取り分(相続分)はどれほどなのか》。
私は何割もらえるの?という話ですね。
⚪︎
まず、相続分を定める際に最優先されるのは、「亡くなった被相続人の意思」です。
第九百二条 被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。ただし、被相続人又は第三者は、遺留分に関する規定に違反することができない。
2 被相続人が、共同相続人中の一人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前二条の規定により定める。
遺言ですね。
「遺言があれば遺言に従う」(指定相続分)。
これが最優先されます。
で、遺言がない場合に、さあ、どうしましょう?
その時に備えて、「法定相続分」の規定があります。
各相続人の具体的な法定相続分はどれほど?
これは場面によります。
(法定相続分)
第九百条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
(ここで「同順位の相続人が数人あるときは」というのは、890条に、「配偶者と配偶者以外の相続人とは同順位とする」と定められていることに由来します。)
夫が亡くなった事案で
①妻と子2人が残された
②子なしで、妻と両親が残された
③子も親もなしで、妻と兄弟姉妹が残された
まず、①の場面、妻と子は対等です。「1対1」です。つまり、「妻1/2&子1/2(子2人の場合それぞれ1/4ずつ)」。
妻は別格の存在だし子も特別な存在なので優劣つけられない、ということです。
②の場面では、別格の妻が親に優先します。「妻2対親1」です。つまり、「妻2/3&両親1/3」。
③の場面では、別格の妻の優先度がさらに高まります。「妻3対兄弟姉妹1」です。つまり、「妻3/4&兄弟姉妹1/4」。
単純なことですね。
「別格の妻対特別な子」→1対1
「別格の妻対親」→2対1
「別格の妻対兄弟姉妹」→3対1
だんだんと妻の取り分が大きくなっていきます。
もう頭に入りましたよね。妻の取り分が1、2、3と増えていく、そう覚えましょう。
以上、相続の基本中の基本、相続人は誰と誰?各相続人の相続分はどれほど?というお話でした。
正確に押さえておきましょうね。
追記
〈相続人がいない場合〉どうなるのでしょう?
〈相続人が存在しないor存在不明の場合〉どうするの?
というお話です。
どうでしょう?
そうですね。国庫に入りますよね。
第九百五十九条 前条の規定により処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する。この場合においては、第九百五十六条第二項の規定を準用する。
でも、最終的には・・です。
それまでには、一定の期間と諸手続きが必要となります。
国庫に入るなんて、最後の最後の話です。
まず、不明の相続人を探す努力はします。一応。
しかし、いなかった。親族はいないようだと。
でも、〈生前に、家族のように被相続人の世話をしていた、事実上の妻、事実上の養親、事実上の養子のような人がいた場合〉。
そんな場合は、残された財産が国庫に入ってしまうよりも、「そういう人に自分の財産を渡してあげたい」被相続人はそう考えるのではないでしょうか。
それが、〈特別縁故者への相続財産の分与〉の制度です。
(特別縁故者に対する相続財産の分与)
第九百五十八条の三 前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
2 前項の請求は、第九百五十八条の期間の満了後三箇月以内にしなければならない。
でも、特別縁故者からの分与の請求も無かった。。
そのときには、最終的に、相続財産は国庫に帰属することになります。
さらに、追記
〈相続人が不存在の場合〉、最終的に国庫に帰属するまでの間、相続財産は誰に帰属するのでしょうか?
相続人がいない以上、誰にも帰属しませんよね。宙に浮いた状態になってしまう。
でも、国庫に帰属するまでは、一定の期間と手続きを必要とする、と書きました。
その間、宙ぶらりんでは困ります。
で、どうするか?
実は、相続財産は、「法人」となるのです。「相続財産法人」となるのです。
(相続財産法人の成立)
第九百五十一条 相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。
細か~い条文ですけど。。参考まで。
□ □ □
まとめ
相続人は誰と誰なのか?
私も相続人なの?
相続人の決定は、相続の議論の大前提となる話です。
理解してしまえば単純なことです。正確に押さえておきましょう。
○
今回は、以上です。
○
○
これを書いたひと🍊