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他人物売買(民法560条)/数量指示売買(民法565条)/瑕疵担保責任(570条)/他担保責任の条文をわかりやすく

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数量指示売買今回は、民法560~570条「他人物売買/数量指示売買/瑕疵担保責任/他 担保責任の条文をモノにする方法」という、お話です。

Photo by Grégoire Bertaud on Unsplash

「うわっ!細かい…」

そう思われるかもしれません。

でも、担保責任(560~570条)については問われるポイントは決まりきっていて、一度納得してしまえば一瞬で解けるようになります。

 

テキストや解説付きの六法等で担保責任(560~570条)の項をみてみると、大抵の場合、表が載っていることと思います。その表の〈特殊な部分〉が繰り返し問われます。それだけです。

丸暗記してもすぐに忘れますので、納得した上で覚える。〈特殊な部分〉がなぜ特殊なのかその理由を納得した上で覚える。そうすれば一瞬で解けるようになります。

例えば、こういう表。条文ごとに、買主の主観について善意悪意の二段で、代金減額請求の有無、解除・損害賠償請求の可否、除斥期間の有無、を表にしたものです。(スマホは横にしてネ)

     買主の主観 代金減額請求 解除 損賠請求 除斥期間

隠れたる瑕疵 善意    −   ◯  ◯ 知った時から1年

(570条) 悪意    −    X         X              −

全部他人物  善意    −   ◯  ◯    なし

(561条) 悪意    −    マル    X        なし

一部他人物  善意   マル       ◯  ◯  知った時から1年

(563条) 悪意   マル     X         X    契約の時から1年

数量不足   善意   マル          ◯  ◯   知った時から1年

(565条) 悪意     X         X   X      −

用益権制限  善意      −    ◯  ◯      知った時から1年

(566条) 悪意      −     X   X     −

担保権制限  善意      −    ◯  ◯     なし

(567条) 悪意      −   マル マル     なし

条文です。

第二款 売買の効力

他人の権利の売買における売主の義務
第五百六十条  他人の権利を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う

他人の権利の売買における売主の担保責任
第五百六十一条  前条の場合において売主がその売却した権利を取得して買主に移転することができないときは買主は、契約の解除をすることができる。*←解除は買主が悪意でも可なぜ?この場合において、契約の時においてその権利が売主に属しないことを知っていたときは、損害賠償の請求をすることができない*←損害賠償請求は善意の買主のみ

他人の権利の売買における善意の売主の解除権)*←よく問われる
第五百六十二条  売主が契約の時においてその売却した権利が自己に属しないことを知らなかった場合において、その権利を取得して買主に移転することができないときは売主は損害を賠償して、契約の解除をすることができる
2  前項の場合において、買主が契約の時においてその買い受けた権利が売主に属しないことを知っていたときは売主は買主に対し、単にその売却した権利を移転することができない旨を通知して、契約の解除をすることができる

権利の一部が他人に属する場合における売主の担保責任
第五百六十三条  売買の目的である権利の一部が他人に属することにより、売主がこれを買主に移転することができないときは買主は、その不足する部分の割合に応じて代金の減額を請求することができる。*←代金減額請求あり/買主が悪意でも可なぜ?
2  前項の場合において、残存する部分のみであれば買主がこれを買い受けなかったときは善意の買主は、契約の解除をすることができる。*←善意の買主のみなぜ?
3  代金減額の請求又は契約の解除は、善意の買主が損害賠償の請求をすることを妨げない。*←善意の買主のみ
第五百六十四条  前条の規定による権利は買主が善意であったときは事実を知った時から悪意であったときは契約の時から、それぞれ一年以内に行使しなければならない。*←除斥期間の起算点に注意

数量の不足又は物の一部滅失の場合における売主の担保責任
第五百六十五条  前二条の規定は数量を指示して売買をした物に不足がある場合又は物の一部が契約の時に既に滅失していた場合において買主がその不足又は滅失を知らなかったときについて準用する。*←善意の買主のみなぜ?/代金減額請求あり

地上権等がある場合等における売主の担保責任)*←原則型と同じ
第五百六十六条  売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。*←善意の買主のみ
2  前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する
3  前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内しなければならない。*←除斥期間

抵当権等がある場合における売主の担保責任
第五百六十七条  売買の目的である不動産について存した先取特権又は抵当権の行使により買主がその所有権を失ったときは買主は、契約の解除をすることができる。*←買主が悪意でも可why?
2  買主は、費用を支出してその所有権を保存したときは売主に対し、その費用の償還を請求することができる
3  前二項の場合において、買主は、損害を受けたときは、その賠償を請求することができる。*←買主が悪意でも可why?

強制競売における担保責任)*←よく問われる
第五百六十八条  強制競売における買受人は第五百六十一条から前条までの規定により、債務者に対し、契約の解除をし、又は代金の減額を請求することができる
2  前項の場合において、債務者が無資力であるときは、買受人は、代金の配当を受けた債権者に対し、その代金の全部又は一部の返還を請求することができる
3  前二項の場合において、債務者が物若しくは権利の不存在を知りながら申し出なかったとき、又は債権者がこれを知りながら競売を請求したときは、買受人は、これらの者に対し、損害賠償の請求をすることができる

債権の売主の担保責任)*←よく問われる
第五百六十九条  債権の売主が債務者の資力を担保したときは契約の時における資力を担保したものと推定する
2  弁済期に至らない債権の売主が債務者の将来の資力を担保したときは弁済期における資力を担保したものと推定する

売主の瑕疵担保責任)*←原則型!
第五百七十条  売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは第五百六十六条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。*←善意の買主のみ全てマル

瑕疵担保責任(570条)が原則型

表では、最後の条文である570条が先頭にありますね。

変な感じがしますけど、《担保責任の原則型は570条》だと思ってください。

善意(570条では善意無過失)の買主は全てマル、悪意の買主は全てバツ。

瑕疵ある物をそれと知りながら(悪意で)それでもいいと思って買ったわけで、後から解除とか損賠請求を認めてあげる必要なんてないでしょ、ということです。

除斥期間(権利行使出来なくなる期間)は「知った時から1年」です。

善意者は事情を知らなかったわけで、瑕疵があることを知らないのに、契約の時から1年過ぎてるから今頃気付いてももう解除とかできませんよ、では酷いですよね。買主に落ち度ないのに。。

そこで、当初知らなかった買主が、瑕疵の存在を知ったにもかかわらず1年も権利行使しないでほっといた、そういう時はもう権利行使出来なくなりますよ、自業自得ですよ、としました。つまり、「知った時から1年」です。

悪意の買主にはなんの権利もないので除斥期間もありません。

これが原則型となります。

この原則型と異なる〈特殊な部分〉が繰り返し問われるポイントとなります。表では赤色の部分です。ここさえモノにしてしまえば担保責任の問題は一瞬で(極めて短時間で)解けるようになります。

最初だけです。面倒に感じるのは。やるかやらないか。きっちりやってしまえば担保責任はもう大丈夫!点をくれるようなもんだあ。きっとそうなれますので、押さえてしまいましょう。

全部他人物(561条)の〈特殊な部分〉

全部他人物売買の〈特殊な部分〉、表の赤文字の部分です。

まず、悪意の買主でも解除が認められています。(条文には「買主は」とあり、善意に限定されていません) 損賠請求はダメ。

なぜでしょう?

他人物の売買というのは、普通に考えると違和感がありますよね。他人の物を売ってしまう。処分権限もないのに。。

他人の物を処分する権限なんて通常はありませんから、物権的な効果は生じません。つまり、所有権は買主に移転することはありません。

でも、債権的には、他人物売買の契約も有効に成立します。民法も認めている契約形態です。

例えば、売主「現在Aさんが所有しているあの土地を必ず入手してお渡ししますからお任せください。」買主「よろしくお願いします。」みたいな、そんな契約です。

売主は、所有権をAさんから取得して買主に移転する契約上の義務を負担します。

他人の権利の売買における売主の義務
第五百六十条  他人の権利を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う

他人の権利の売買における売主の担保責任
第五百六十一条  前条の場合において、売主がその売却した権利を取得して買主に移転することができないときは買主は、契約の解除をすることができる←買主が悪意でも可 この場合において、契約の時においてその権利が売主に属しないことを知っていたときは、損害賠償の請求をすることができない←善意の買主のみ

他人物売買というのは、売主買主ともに、他人物であることを承知の上で契約することを予定しています。

例えば、買主「Aさんのあの土地をなんとしてでも手に入れたいので売主さんよろしくお願いします。」売主「分かりました。必ず入手してお渡し致します。」こんな感じ。

この場合、売主は、他人(Aさん)から権利を入手して買主に移転する契約上の義務を負います(560条)。

売主が、無事に他人(Aさん)から所有権を入手することができたときは、その瞬間に、所有権は売主から買主へと移転します。売買契約は既に結んでありますからね。

他方、売主が結局他人(Aさん)から所有権を入手できなかったときはどうなるでしょう?

買主は悪意だからなにも言えない?支払い済みの代金は返してもらえない?

それは違和感ありますよね。他人物売買は売主買主双方ともに他人物であると知っていることを予定している契約形態で、民法も認めている有効な契約形態です。悪意だからダメとは直ちには言えません。

買主としては、所有権の入手を売主に頼んだようなものです。売主が任務を達成できなかったときは、買主としては「じゃあ、代金を返してよ。」「契約はなかったことにして支払った代金を返してよ」と言いたくなりますよね。

物は手に入らない、代金は返してもらえないでは、買主が一方的に不利益を受けてしまっておかしいと感じます。

そこで、他人物と知っていた悪意の買主にも、契約を白紙に戻す権利つまり解除権を認めました

ただ、損賠請求は認められません。他人物売買契約は、売主ではない他人の物を売主から買うというリスキーな契約です。悪意の買主はそれを知っていた、リスク承知の上だったわけで、一定のリスクは負担すべきと言えます。そこで、解除は認めるけれど損賠請求は認めないよ、としました。

繰り返しますね。

全部他人物売買では、悪意の買主にも契約を白紙に戻す解除は認められるけれども、損賠請求は認められません。

ここで見て欲しい条文があります。同じように悪意の買主にも解除が認められている担保権制限の条文です。

この条文では悪意の買主には解除だけでなく損賠請求まで認められています。(条文には「買主は」とあり、善意に限定されていません) なぜでしょう?

抵当権等がある場合における売主の担保責任
第五百六十七条  売買の目的である不動産について存した先取特権又は抵当権の行使により買主がその所有権を失ったときは買主は、契約の解除をすることができる←買主が悪意でも可
2  買主は、費用を支出してその所有権を保存したときは売主に対し、その費用の償還を請求することができる
3  前二項の場合において、買主は、損害を受けたときは、その賠償を請求することができる←買主が悪意でも可

他人物売買は、売主買主ともに他人物であることを知っていること(悪意)を予定している契約形態で、リスキーな契約だと書きました。

担保権の付いた不動産の売買も、売主買主ともに担保権の存在を知っていること(悪意)を予定している契約形態です。ていうか、普通知っています。登記簿の乙欄を見れば、担保権の存否なんてすぐにわかります。抵当権を設定したら抵当権設定登記をしますから、普通は。

で、抵当権付きの不動産を買うなんてリスキーかというと、他人物売買ほどリスキーではありません。

不動産は売主所有。買主としてはすぐにでも抵当権を消してしまいたい。でも売主にはその資金がない。

で、買主はどうするかというと、「抵当権付きで買って、私(買主)の方で売主に代わって債務を返済して抵当権を抹消させます、だから債務の金額分を売買代金から差し引いてくださいね。」そういう方法をとる。

例えば、不動産の売買代金は1億円、付いている抵当権の非担保債権額は3千万円とすると、買主の方で売主に代わって非担保債権額3千万円を抵当権者に弁済して抵当権を抹消するので、売買代金は1億円から3千万円を差し引いた7千万円でお願いします、って感じ。

ただ、条文上、567条はそういう方法は取らず、売買代金は1億円のまま、抵当権は売主側で抹消するという約束で契約したところ、結局、抵当権が実行されて競売にかけられ他人の手に渡ってしまった、という事案です。

このときの買主、抵当権の存在について悪意だったから解除できない?不動産は他人の手に渡ってしまったうえ、支払った売買代金の1億円は返してもらえない?

それはないですよね。売主を信頼して、売主がきちんと債務を返済して抵当権を抹消する、という言葉を信じて契約した買主が、一方的に不利益を受ける理由はありません。

売主の行為次第なんですね。買主は売主の行為(返済)次第という立場にある。担保権の付いた不動産なんて普通にあるわけで、そういう不動産を買うことに責められる要素は少ない、といえると思います。

そこで、悪意の買主には、契約の解除権のみならず損賠請求も認められています

全部他人物売買担保権付き不動産の売買との共通点と相違点、よろしいでしょうか。

悪意を予定している契約形態で、悪意の買主にも解除が認められる。損賠請求まで認められるか否かは買主にリスクを負担させる程度による。

他人物売買というリスキーな契約であることを承知の買主は、ある程度のリスクを負担すべきといえ、損賠請求までは認めないけれど、他方、普通にある担保権付き不動産の売買の買主には、責められる要素は少ないといえるので、損賠請求まで認められる。こんな感じです。

さて、全部他人物売買の〈特殊な部分〉、表の赤文字部分、もう1箇所ありますよね。

そうです。除斥期間の部分です。除斥期間、つまり、買主はもう権利行使できませんよという期間制限が「なし」となっていますね。

原則型では「知った時から1年」でした。買主は瑕疵の存在を知ったのに1年も権利行使せずにほっといたのだからもうダメよ。そんな趣旨でした。

でも、他人物売買では、買主の権利行使の可否は、「売主が他人物の所有権を取得して買主に渡せるか否か」にかかっています。

売主がモタモタして他人物の所有権の取得に手こずっていて1年が経ってしまった、買主は契約当初から知っていたから1年の除斥期間でもう解除はダメよ?それはかわいそうですよね。

買主はどうしようもありません。買主の権利行使は売主の行為次第なんですね。こういう場合、除斥期間なんて設定できません。売主次第だから。。善意の買主が事情を知った場合も同じです。売主次第。除斥期間なんて設定できません。

同じことが、担保権付き不動産の売買でも言えます。

表の担保権制限(567条)の除斥期間の部分、赤文字で「なし」となっていますね。

担保権付き不動産の売買でも、買主の権利行使は、「売主が担保権を抹消してくれるか否か」にかかっています。

つまり、ここでも、買主の権利行使は売主の行為次第なんですね。やはり、ここでも、除斥期間なんて設定できません。売主次第だから。。

このように、除斥期間なし」という点で、全部他人物売買と担保権付き不動産売買とは共通しています。

 一部他人物(563条)の〈特殊な部分〉

権利の一部が他人に属する場合における売主の担保責任
第五百六十三条  売買の目的である権利の一部が他人に属することにより、売主がこれを買主に移転することができないときは買主は、その不足する部分の割合に応じて代金の減額を請求することができる←代金減額請求あり(買主が悪意でも可)
2  前項の場合において、残存する部分のみであれば買主がこれを買い受けなかったときは、善意の買主は、契約の解除をすることができる←善意の買主のみ
3  代金減額の請求又は契約の解除は、善意の買主が損害賠償の請求をすることを妨げない←善意の買主のみ
第五百六十四条  前条の規定による権利は、買主が善意であったときは事実を知った時から、悪意であったときは契約の時から、それぞれ一年以内に行使しなければならない←除斥期間の起算点に注意

一部他人物売買の〈特殊な部分〉、表の赤文字部分です。

代金減額請求というものが、買主の善意悪意を問わず認められています。(条文には「買主は」とあり、善意に限定されていません)

表を見ると、同じ他人物売買でも、全部他人物と一部他人物とで大きく違いますね。ややこしそう…そんな感じを受けます。

でも、大丈夫。単純な違いです。つまり、全部他人物の解除の部分を左にひとつずらしただけです。解除の部分が代金減額請求にひとつずれただけ。

なぜ?

全部他人物では、全部を入手できなかったので解除を認めました。一部他人物では、入手できないのは一部に過ぎません。ごく一部に過ぎないのに全部解除を認める必要はない、一部解除で十分です。

しかし、民法には一部解除という制度はありません。そこで、一部解除と同じ効果を生じる代金減額請求というものを認めました。つまり、入手できなかった一部分に相応する支払い済みの代金が戻ってくれば良いわけです。それが代金減額請求なわけです。

全部他人物の解除部分を左にひとつずらしただけ、と書きました。一部解除なのだと。

で、全部他人物では、悪意の買主にも、契約を白紙に戻す権利つまり解除権が認められました。よって、一部他人物でも、悪意の買主にも、そこだけ契約を白紙に戻す権利つまり一部解除権つまり代金減額請求権が認められています。

あとは、ほぼ原則型通りです。善意の買主には、「残存する部分のみであれば買主がこれを買い受けなかったときは」(全部)解除を認められます。悪意の買主には、代金減額請求を認めれば十分ですので、(全部)解除も損賠請求も認められません。全部他人物の解除部分を左にひとつずらしただけ、と覚えてくださいね。

で、もう1箇所、全部他人物と違う部分があります。除斥期間の部分です。

一部他人物では除斥期間がありますね。これは一部に過ぎないからです。一部に過ぎないからまあいいや、そういう買主もいます。代金減額請求でいいなら早く権利行使しなよ。1年もほっておいたらもういいんだと受け取られても仕方ないよ。そんな感じ。法律関係の早期の安定の方を重視したということです。

で、善意の買主の除斥期間は「知った時から1年」です。悪意の買主は最初から知っていたわけですから、除斥期間は「契約の時から1年」です。

よろしいでしょうか。同じ他人物売買でも全部他人物と一部他人物とで一見大きく異なるようですけど、単純な話です。納得した上で覚えてしまいましょう。

数量不足(565条)の〈特殊な部分〉

数量の不足又は物の一部滅失の場合における売主の担保責任
第五百六十五条  前二条の規定は数量を指示して売買をした物に不足がある場合又は物の一部が契約の時に既に滅失していた場合において、買主がその不足又は滅失を知らなかったときについて準用する←善意の買主のみ代金減額請求あり

数量不足というのは、一部他人物と同じようなものです。

一部、足りないよ。足りない部分の分だけ代金減額請求するよ、そこは共通しています。

ただ、数量不足では、悪意の買主には一切の権利が否定されています。

なぜでしょう?

他人物売買は、最初から悪意を予定している契約形態で、悪意の買主にも解除や代金減額請求は認められました。

でも、数量不足ではそういう事情はありません。不足してたら、足りないよと指摘しますよね、買主は、普通。その数量じゃダメだということなら契約しません、普通。

ここは原則型の瑕疵担保責任と同じです。数量不足をそれと知りながら(悪意で)それでもいいと思って買ったわけで、後から代金減額請求とか解除とか損賠請求を認めてあげる必要なんてないでしょ、ということです。他人物売買が特殊だったんですね。

除斥期間も、原則型通りです。善意の買主のみ。「知った時から1年」です。一部に過ぎないからまあいいや、そういう買主もいます。代金減額請求でいいなら早く権利行使しなよ。1年もほっておいたらもういいんだと受け取られても仕方ないよ。そんな感じ。

悪意の買主にはなんの権利もないので除斥期間もありません。

数量不足では、〈特殊な部分〉1箇所だけ。善意の買主に代金減額請求が認められる。ここだけ。あとは原則型通りです。

一部他人物と数量不足との共通点と微妙な違い、押さえてしまいましょう。

用益権制限(566条)

地上権等がある場合等における売主の担保責任←原則型と同じ
第五百六十六条  売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができるこの場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる←善意の買主のみ
2  前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する
3  前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない←除斥期間

買った不動産に用益権が付いていた、という場合です。

これは、原則型通りです。買った物に瑕疵があった場合と同じです。善意の買主には全て認められ悪意の買主には何も認められません

用益権が付いているのを、それと知りながら(悪意で)それでもいいと思って買ったわけで、後から解除とか損賠請求を認めてあげる必要なんてないでしょ、ということです。

除斥期間も「知った時から1年」です。

悪意の買主にはなんの権利もないので除斥期間もありません。

担保権制限(567条)の〈特殊な部分〉

抵当権等がある場合における売主の担保責任
第五百六十七条  売買の目的である不動産について存した先取特権又は抵当権の行使により買主がその所有権を失ったときは買主は、契約の解除をすることができる←買主が悪意でも可
2  買主は、費用を支出してその所有権を保存したときは売主に対し、その費用の償還を請求することができる
3  前二項の場合において、買主は、損害を受けたときは、その賠償を請求することができる←買主が悪意でも可

担保権制限については、前述しました。

普通にある担保権付き不動産の売買の買主には、責められる要素は少ないといえるので、担保権の存在について悪意の買主にも、契約の解除権のみならず損賠請求も認められています。

全部他人物との共通点と相違点を納得した上で、押さえておきましょう。

まとめ

担保責任の規定は、表を活用すること。

原則型とは異なる〈特殊な部分〉を押さえること。

何度も何度も納得した上で覚える。自分の中で常識になった時、一瞬で解けるようになっています。点をくれるような問題にきっとなります。モノにしてしまいましょう。

なお、試験的には、実は、表に出てこない条文が、よく問われています。

例えば、562条(他人の権利の売買における善意の売主の解除権)や568条(強制競売における担保責任)や569条(債権の売主の担保責任)。

みんながチェックしているであろう知識の周辺知識を問う、という試験によくあるパターンです。。

ここも、特殊な部分を納得して頭にいれておけば、大丈夫です。

他人の権利の売買における善意の売主の解除権←よく問われる
第五百六十二条  売主が契約の時においてその売却した権利が自己に属しないことを知らなかった場合において、その権利を取得して買主に移転することができないときは売主は損害を賠償して、契約の解除をすることができる
2  前項の場合において、買主が契約の時においてその買い受けた権利が売主に属しないことを知っていたときは売主は買主に対し、単にその売却した権利を移転することができない旨を通知して、契約の解除をすることができる

強制競売における担保責任)←よく問われる
第五百六十八条  強制競売における買受人は第五百六十一条から前条までの規定により、債務者に対し、契約の解除をし、又は代金の減額を請求することができる
2  前項の場合において、債務者が無資力であるときは、買受人は、代金の配当を受けた債権者に対し、その代金の全部又は一部の返還を請求することができる
3  前二項の場合において、債務者が物若しくは権利の不存在を知りながら申し出なかったとき、又は債権者がこれを知りながら競売を請求したときは、買受人は、これらの者に対し、損害賠償の請求をすることができる

債権の売主の担保責任←よく問われる
第五百六十九条  債権の売主が債務者の資力を担保したときは契約の時における資力を担保したものと推定する
2  弁済期に至らない債権の売主が債務者の将来の資力を担保したときは弁済期における資力を担保したものと推定する

今回は、以上です。

これを書いたひと🍊

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