前回の判例では、民法に明文はないものの、「意思能力のない者の行為は当然に無効であること」「制限行為能力者制度による取り消しと意思能力の欠如による無効主張とはどちらも主張できること(いわゆる二重効)」を確認しました。
で、今回は、その補充として、能力に関してよく問われる基本知識である、「代理人&使者に意思能力/行為能力は必要か?」について書いておこうとおもいます。
photo credit: JLS Photography - Alaska Happy first day of Spring! via photopin (license)
代理において、「代理人に意思能力は必要?行為能力は?」「本人に意思能力は必要?行為能力は?」
使者において、「使者に意思能力は必要?行為能力は?」「本人に意思能力は必要?行為能力は?」
即答できました?すぐにでてきたでしょうか?
試験直前に暗記すればいい?
暗記なんて、要りません。いっぺん納得してしまえばもう忘れることはない、そんな簡単な知識です。即答できなかった方は、ぜひここで納得した上で、頭に入れてしまってくださいね。暗記なんて必要ありませんから。
二度と忘れることのない、この投稿を読んだ後は何ヶ月経ったとしても即答できるようになる、そんな頭への残し方を書いておきますね。
代理人と使者の比較に関する基本知識
「代理で行為するのは、代理人です」。本人が行為できないからこそ代理人を選任したわけですから。
これに対して、
「使者で行為するのは、本人です」。使者はいわゆる使いっ走りに過ぎません。(失礼…)放たれた矢と同じです。矢を放つのは本人です。矢に意思はなく行為もしません。飛んでいくだけ。
ここから全てを導き出せます。「意思決定は誰がするのか?」「意思能力&行為能力の要否」「意思表示の瑕疵(騙されたとか錯誤とか)は誰を基準にするのか?」など。。
代理人に行為能力は要らない
ただ、一点。特殊なところがあります。こういうところを問われますよね。
それは、「代理人には行為能力は要らない」という点。
変ですよね。「代理で行為するのは、代理人」でした。行為するんだから行為能力は必要でしょ?が筋です。
でも、102条に「行為能力は要らない」とワザワザ定めてあります。
(代理人の行為能力)
第百二条 代理人は、行為能力者であることを要しない。なぜ?
理屈を言うと、「代理では法律効果は本人に帰属するからー代理人は義務を負うことないから、制限行為能力者の制度で代理人を保護する必要無い。」「行為能力を必要として、行為能力ないときは行為を取り消せるとして保護する必要無い。」ってことですけど、もっと単純に、「本人が、制限行為能力者でも構わないと思って選任したんだからいいんじゃないの。」でオッケイです。「選んだ本人がリスクを負う」ということ。
比較の表を活用しよう!
こういう比較の表って、テキストにいくつも入ってますよね。活用しましょう!
比較の問題多いです。で、特殊なところを覚える。丸暗記ではなくて、そうだよなあ、と納得して覚える。
「本人がそれでもいいっていうんだから、いいんじゃね?」みたいに。
代理&使者の意思表示の瑕疵は誰を基準に決める?
これは、基本から素直に導かれます。
っていうか、「代理人の行為能力」以外は、基本から素直に導き出せる結論です。
「代理で行為するのは(意思表示するのは)代理人」です。
「使者で行為するのは(意思表示するのは)本人」です。
《意思表示の瑕疵は、行為する(意思表示する)人を基準》に考えます。
つまり、「代理では代理人を基準」に。「使者では本人を基準」に。
意思能力&行為能力の要否
同様の視点から、「関係当事者の意思能力&行為能力の要否」を導き出せます。
「代理で行為するのは(意思表示するのは)代理人」です。
従って、「意思表示をする代理人には意思能力が必要」です。
ただし、唯一の特殊な知識として、「代理人には行為能力は不要」でしたね(第百二条)。制限行為能力者制度で代理人を保護する必要はないからでした。
そして、代理では、「本人には意思能力も行為能力も不要」です。本人が能力を欠くからこそ、代理人をつけて意思表示を/行為を代理させてるわけですから。
これに対して、
「使者で行為するのは(意思表示するのは)本人」です。
「放たれた矢にすぎない使者には意思能力も行為能力も不要」です。
そして、使者では、「本人に意思能力&行為能力が必要」です。意思表示を行為をするのは、本人自身だからです。
以上、どうでした?納得できました?
暗記は極力避けましょうね。忘れたらおしまいですから。
納得して覚えたことは、何ヶ月、何年、時間が経ってもでてきます。
納得する、何度も何度も納得する、そういう勉強を、多少の時間がかかったとしても続けていく。オススメします。