一筆の土地の一部についての取引(大審院大正13年10月7日判決)をわかりやすく

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一筆の土地の一部

民法判例百選Ⅰ[第8版] No.10
一筆の土地の一部についての取引
(大審院大正13年10月7日)

「一筆の土地の一部」は所有権の対象になりますか?

はい、なります。

取引の対象になりますか?

はい、なります。

「一筆の土地の一部」を時効取得できますか?

はい、できます。

以上。。

photo credit: Eric@focus La maison des huîtres, îlot Nichtarguér. via photopin (license)

で、いいんですけど。。せっかくなので、もう、一言、二言、加えると、、

「特定性の確保」と「取引の安全」

物を所有権の対象とするには、"特定性が確保"されている必要がありますけど、「一筆の土地の一部」の場合は、"縄を張ったり、杭を打ったりして、外形上、他と区分できる"ので、「ここだけ売りたいの」と特定性を確保することが可能です。

また、それを「第三者に対抗できるか否か」は、177条の話であって、分筆して買主に所有権移転登記しないかぎり、その所有権の取得を第三者に対抗することができない以上、第三者の"取引の安全"を害する心配もありません。

つまり、、

「一筆の土地の一部」も取引対象になりうる以上、譲渡の意思表示のみで、「一筆の土地の一部」の所有権は、買主に移転します(176条)。

(物権の設定及び移転)
第百七十六条  物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる

(*「一筆の土地の一部」の買主も権利者である以上、不法行為者に対して、損害賠償請求ができます(709条)。大判昭和14年2月23日)

でも、物権の取得は、登記をしないと、第三者に対抗することができません。

(不動産に関する物権の変動の対抗要件)

第百七十七条  不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 (平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない

「一筆の土地の一部」を分筆した上で、買主に所有権移転登記をする。これをすれば、第三者に対しても、「一筆の土地の一部」の所有権取得を、対抗することができるようになる。

その手続きを終える前に第三者が現れて、先に登記(一筆の土地の所有権移転登記)をされてしまうと、もはや、「一筆の土地の一部」の所有権取得を、第三者に対抗できなくなってしまいます。

取引はできるけど、「第三者に対抗できるか否か」は、別の話です、ということ。

(なお、*不法行為者は、177条の「第三者」にあたりません。「第三者」とは、「登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者」をいうからですね。この場合、買主は登記がなくても所有権の取得を不法行為者に対抗することができます。参照:民法177条の「第三者」とは)

所有権のみならず、地上権や抵当権も、「一筆の土地の一部」の上に設定できます。もちろん、それを「第三者に対抗できるか否か」は、177条の話です。

また、区分された「一筆の土地の一部」を占有することも、可能です。占有が長く続けば、時効取得もありえます。

(所有権の取得時効)
第百六十二条  二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する
2  十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。

つまり、「一筆の土地の一部」の時効取得も認められます(今回判例と同日付判例)。もちろん、それを「第三者に対抗できるか否か」は、177条の話です。分筆手続きを経て、その所有権移転登記を備えない限り、「時効取得完成に現れた第三者」に対して、「一筆の土地の一部」の所有権取得を対抗できません。

(なお、「時効取得完成の第三者」つまり、完成前に第三者が土地を譲り受けた場合、その第三者は、「取得時効完成時の当事者」です。その人の土地を時効取得したわけで、「当事者同士」です。177条の適用などありません。第三者の不動産取引の安全‥なんて話はでてきません。その人の土地を時効取得しただけのことですから。時効取得の登記を備えないと‥なんて話はでてきません。)

以上、「一筆の土地の一部」も、「取引対象となること」、「時効取得の対象となること」、ただし、「第三者に対抗できるか否か」は別の話であること(177条)。でした。

今回は、以上です。

これを書いたひと🍊

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