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改正民法第101条「代理行為の瑕疵」第102条「代理人の行為能力」〜代理行為の有効性に関して瑕疵ある意思表示を代理人がした場合と相手方がした場合とを区別等

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代理行為の有効性に関して

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2020年4月1日施行の改正民法により、瑕疵ある意思表示を代理人がした場合と相手方がした場合とで区別(第101条1項2項)、本人が特定の法律行為を代理人に委託した場合について「本人の指図に従って」の要件が削除(第101条3項)、制限行為能力者の代理行為について分かりやすく表現するとともに例外としてただし書が追加(第102条)されました。

(代理行為の瑕疵)
新法第百一条  代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする
2   相手方が代理人に対してした意思表示の効力が意思表示を受けた者がある事情を知っていたこと又は知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする
3  特定の法律行為をすることを委託された代理人がその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする

(旧)第百一条 意思表示の効力が意思の不存在、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。
2  特定の法律行為をすることを委託された場合において、代理人が本人の指図に従ってその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする。

(代理人の行為能力)
新法第百二条  制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りでない

(旧)第百二条 代理人は、行為能力者であることを要しない。

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区別の明示/削除/追加の必要性

今回の改正は、①社会・経済の変化への対応、②国民一般にとっての分かりやすさの向上を目的としています。

今回投稿のテーマは、②国民一般にとっての分かりやすさを向上させるため、確立した判例や通説的見解など現在実務で通用している基本的なルールを明文化するものです。

代理行為の瑕疵に関して瑕疵ある意思表示を代理人がした場合と相手方がした場合とを区別(101条1項2項)

旧法では、代理行為の瑕疵に関して、(旧)101条1項が、代理人の意思表示のみに関して規定しているのか、相手方の代理人に対する意思表示についても規定しているのか不明でした。

(旧)第百一条 意思表示の効力が意思の不存在、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。

そこで、新法は、国民一般にとっての分かりやすさを向上させるため、瑕疵ある意思表示を代理人がした場合(1項)と相手方がした場合(2項)とを区別して規定、「意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫」については代理人が意思表示をした場合に限り代理行為の瑕疵が問題となることを明確にしています。

(代理行為の瑕疵)
新法第百一条  代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする
2   相手方が代理人に対してした意思表示の効力が意思表示を受けた者がある事情を知っていたこと又は知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする

代理人行為説

101条1項2項は、代理人行為説からの帰結を規定しています。

すなわち、

代理で行為するのは、代理人です

本人が行為できないからこそ代理人を選任したわけですから。

これに対して、

使者で行為するのは、本人です

使者は鉄砲玉と同じです。鉄砲を撃つのは本人です。玉に意思はなく行為もしません。飛んでいくだけ。

ここから全てを導き出せます。

「意思決定は誰がするのか?」

「意思能力&行為能力の要否」

「意思表示の瑕疵(騙されたとか錯誤とか)は誰を基準にするのか?」

では、代理/使者の意思表示の瑕疵は誰を基準に決めるのか?

代理で行為するのは(意思表示するのは)代理人です。

使者で行為するのは(意思表示するのは)本人です。

意思表示の瑕疵は、行為する(意思表示する)人を基準に考えます。

つまり、

代理では代理人を基準に。

使者では本人を基準に。

代理人行為説から素直に導かれます。

本人が特定の法律行為を代理人に委託した場合について「本人の指図に従って」の要件を削除(101条3項)

代理行為における意思表示の瑕疵は、行為する(意思表示する)人つまり代理人を基準に考えます。代理人行為説ですね。

ただ、本人が代理人の意思決定に影響力をもっていたような場合には、本人の主観的態様を考慮することが公平といえます。(旧101条2項)

(旧)第百一条 意思表示の効力が意思の不存在、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。
2  特定の法律行為をすることを委託された場合において、代理人が本人の指図に従ってその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする

旧法では、「代理人が本人の指図に従ってその行為をしたとき」と規定されてましたけど、判例(大判明治41年6月10日)は、公平の観点から、「本人の指図」を緩やかに解釈、通説的見解も広く本人の主観的態様を考慮すべきとして「本人の指図」の要件は不要とされていました。

こうした確立した判例や通説的見解をうけて、新法101条3項は、「本人の指図に従って」の要件を削除、本人が特定の法律行為を代理人に委託した場合であれば、「本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない」と規定しています。

新法第百一条  
3  特定の法律行為をすることを委託された代理人がその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする

例えば、無権利者との売買契約で、代理人が売主の無権利について善意無過失であっても、買主本人が悪意のときは、即時取得(192条)は成立しません。

(即時取得)
第百九十二条  取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。

制限行為能力者の代理行為について分かりやすく表現するとともに例外としてただし書を追加(第102条)

代理で行為するのは(意思表示するのは)代理人です。

意思表示の瑕疵は、行為する(意思表示する)人を基準に考えます。

つまり、

代理では代理人を基準に。

代理人行為説から素直に導かれました。

ただ、一点、特殊なところがあります。

それは、〈代理人には行為能力は要らない〉という点。

変ですよね。代理で行為するのは、代理人でした。

行為するんだから行為能力は必要でしょ?が筋です。

でも、(旧)102条に行為能力は要らないとワザワザ定めてありました。

つまり、制限行為能力者による代理行為は、行為能力の制限の規定によって取り消すことができないとされていました。

(代理人の行為能力)
(旧)第百二条 代理人は、行為能力者であることを要しない。

なぜ?

理屈を言うと、代理では法律効果は本人に帰属するから(代理人は義務を負うことないから)、制限行為能力者の制度で代理人を保護する必要は無い。行為能力を必要として、行為能力ないときは行為を取り消せるとして保護する必要は無い。ってことですけど、、

単純に、任意代理では、本人が、制限行為能力者でも構わないと思って選任したんだからいいんじゃないの。でオッケイです。選んだ本人がリスクを負う、ということ。

新法は、こうしたことを国民一般にとってより分かりやすく表現するとともに、例外としてただし書を新たに追加しました。(新法第102条)

(代理人の行為能力)
新法第百二条  制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りでない

「ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りでない。」つまり、行為能力の制限の規定によって取り消すことができる。

この場面で代理行為の取り消しができないとすると、本人(他の制限行為能力者)の保護が十分に図れないおそれがあるし、また、法定代理の場面では、本人が法定代理人を自ら選任しているわけではないから、「選んだ本人がリスクを負うべき」とはいえないのですね。

なお、ここでの取消しの根拠規定は、9条本文、13条第1項第10号・第4項、第17条第1項ただし書・第4項です。

また、取消権者は、他の制限行為能力者の法定代理人として代理行為をした制限行為能力者、そして、本人である他の制限行為能力者及びその承継人等です。(120条第1項)

こういう条文操作が問われる問題とかありそうです。

(成年被後見人の法律行為)
第九条  成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。

(保佐人の同意を要する行為等)
第十三条  被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
一  元本を領収し、又は利用すること。
二  借財又は保証をすること。
三  不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
四  訴訟行為をすること。
五  贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法 (平成十五年法律第百三十八号)第二条第一項 に規定する仲裁合意をいう。)をすること。
六  相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
七  贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
八  新築、改築、増築又は大修繕をすること。
九  第六百二条に定める期間を超える賃貸借をすること。
十  前各号に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第十七条第一項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の法定代理人としてすること
2  家庭裁判所は、第十一条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求により、被保佐人が前項各号に掲げる行為以外の行為をする場合であってもその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
3  保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。
4  保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる

(補助人の同意を要する旨の審判等)
第十七条  家庭裁判所は、第十五条第一項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、その審判によりその同意を得なければならないものとすることができる行為は、第十三条第一項に規定する行為の一部に限る
2  本人以外の者の請求により前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。
3  補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。
4  補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる

(取消権者)
第百二十条  行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあ
っては、当該他の制限行為能力者を含む
。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる

2  錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。

まとめ

今回の改正では、代理行為の有効性に関して、②国民一般にとっての分かりやすさの向上を目的として、確立した判例や通説的見解など実務で通用している基本的なルールを明文化しました。

瑕疵ある意思表示を代理人がした場合と相手方がした場合とで区別(第101条1項2項)、本人が特定の法律行為を代理人に委託した場合について「本人の指図に従って」の要件が削除(第101条3項)、制限行為能力者の代理行為について分かりやすく表現するとともに例外としてただし書が追加(第102条)されました。

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今回は、以上です。

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代理人と使者の比較問題

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