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本人の無権代理人相続(最高裁昭和37年4月20日)

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無権代理と相続

民法判例百選Ⅰ[第8版] No.35
本人の無権代理人相続
(最高裁昭和37年4月20日)

今回は、《無権代理と相続》、

「本人の無権代理人相続」というお話です。

photo credit: James Whitesmith Misty Trees via photopin (license)

《無権代理と相続》の論点では、テキストなどには、「誰が死亡して誰が相続したのか」、場面を分けて表にまとめてあることとおもいます。

単独相続だけでなく、共同相続の場面もでてきて、一見すると複雑で難しそうに見えますけど、なんてことはない、単純なお話しです。

今回の判例は、〈本人の無権代理人単独相続型〉の場面です。

全ての場面を挙げておくと、次のように分けられます。

  1. 〈無権代理人の本人単独相続型〉
  2. 〈無権代理人の本人共同相続型〉
  3. 〈本人の無権代理人単独相続型〉
  4. 〈本人の無権代理人共同相続型〉

今回は、3.〈本人の無権代理人単独相続型〉の事案ですけど、判旨のなかで、1.〈無権代理人の本人単独相続型〉の処理方法についても触れています。

判旨をみていきましょう。

判旨

〈無権代理人が本人を相続した場合〉においては、自らした無権代理行為につき本人の資格において追認を拒絶する余地を認めるのは信義則に反するから、右無権代理行為は相続と共に当然有効となると解するのが相当であるけれども、〈本人が無権代理人を相続した場合〉は、これと同様に論ずることはできない。後者の場合においては、相続人たる本人が被相続人の無権代理行為の追認を拒絶しても、何ら信義に反するところはないから、被相続人の無権代理行為は一般に本人の相続により当然有効となるものではないと解するのが相当である

判旨では、まず、1.〈無権代理人が本人を単独相続した場合〉について触れています。

簡単な話です。

無権代理人は、自ら勝手に、権限もないのに、無権代理行為をしています。

その後、たまたま本人を相続しました。

で、無権代理人が、「相続した本人の地位」から、「無権代理行為の追認は拒絶します!」という。

お前が言うか!そうつっこみたくなりますよね。

そんな勝手なこと言わせないよ!

これを法律的に書くと、、

「本人の資格において追認を拒絶する余地を認めるのは信義則に反する」となります。

「追認を拒絶する余地はない」ということはつまり、「当然有効となる」ですよね。

ここも学説がいろいろあるところですけど、見ないほうが賢明です。

実務は判例で動いています。学説いろいろみて、判例あやふや、になったらマイナスでしかないですから。

繰り返します。簡単な話です。

「無権代理人が、本人の資格において追認を拒絶するのは信義則に反するから、相続と同時に当然有効となる」。

(基本原則)
第一条 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない
3 権利の濫用は、これを許さない。

(無権代理)
第一一三条 代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない
2 追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。

(無権代理行為の追認)
第一一六条 追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

しかし、判旨は、3.〈本人が無権代理人を単独相続した場合〉は同様に論ずることはできない、といっています。

こちらも簡単な話です。

無権代理人が本人の地位から追認を拒絶するのは、お前が言うか!で、信義則に反するから許されませんでした。

でも、本人が追認拒絶するのは、問題ありませんよね。

たまたま、無権代理人を相続したとしても、本人の地位を失うわけではなく、本人の立場から追認を拒絶したとしても責められる理由はありません。

つまり、、

「本人が被相続人の無権代理行為の追認を拒絶しても、何ら信義に反するところはないから、・・・本人の相続により当然有効となるものではない」となります。

本人は、本人の地位から追認を拒絶することができます。それを責められる理由はない。

ただ、本人は、「無権代理人の地位」を相続しています。「無権代理人の責任」を相続している。この責任を追求されることは考えられます。

この点については、共同相続型の事案ではありますけど、最判昭和48年7月3日の判例があります。

民法一一七条による無権代理人の債務が相続の対象となることは明らかであつて、 このことは〈本人が無権代理人を相続した場合〉でも異ならないから、本人は相続によ り無権代理人の右債務を承継するのであり、本人として無権代理行為の追認を拒絶できる地位にあつたからといつて右債務を免れることはできないと解すべきである。

117条の無権代理人の責任も相続の対象になりますから、本人とはいえ、相続した以上はその責任を免れることはできません。

(無権代理人の責任)
第一一七条 他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明することができず、かつ、本人の追認を得ることができなかったときは、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う
2 前項の規定は、他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき、若しくは過失によって知らなかったとき、又は他人の代理人として契約をした者が行為能力を有しなかったときは、適用しない。

(相続の一般的効力)
第896条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

まとめると、

「本人は、本人の地位から追認を拒絶することができます。それを責められる理由はない。当然有効となったりしない。ただ、117条の無権代理人の責任を相続しているので、その責任を免れることはできない。」

以上、3.〈本人の無権代理人単独相続型〉の事案についての今回の判例でした。

なお、4.〈本人の無権代理人共同相続型〉の事案についても、基本的に、単独相続型の処理方法と同じと考えておいて大丈夫です。

つまり、本人は追認拒絶できるけど、117条の責任は相続するので負うことになります。

まとめ

今回は、〈本人の無権代理人相続型〉の事案でした。

こちらの論点は、比較的単純な話です。なんてことはないですよね。

これに対して、次回の〈無権代理人の本人相続型〉の事案は、多少複雑になります。共同相続型の事案で。若干ですけどね。。

《無権代理と相続》の論点は、理論的につめていくと、いろいろな議論があります。

ありますけど、判例をおろそかにする議論は本末転倒だとおもいます。

シンプルに判例の結論を納得すること。それで十分。

実際は、とっても簡単な、そりゃそうでしょ、っていうだけのお話しです。難しく考えない、身構えない、それがポイントだとおもいます。

今回は、以上です。

これを書いたひと🍊

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