不動産物権変動

民法177条の第三者~不法占拠者(最高裁昭和25年12月19日)

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不法占拠者

民法判例百選Ⅰ[第8版] No.62
民法177条の第三者~不法占拠者
(最高裁昭和25年12月19日)

今回も、「民法177条の第三者」です。

不法占拠者が「第三者」にあたるか?

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さっそく、事案からみていきましょう。

事案

Aは、所有する建物を、Xに売却する契約を結びました。

Xは、未だ、建物の所有権移転登記をしていません。

この建物は、以前からAY間で賃貸借契約が結ばれていて、Yが建物を占有しています。

建物所有権の移転に伴い、新たに賃貸人の地位を取得したXは、建物を占有するYとの間で、賃貸借契約を終了させる旨の合意をします。

ところが、その後も依然として、Yが建物を占有し続けていたため、Xは、Yに対して、建物所有権に基づく建物の明け渡しを求めて提訴しました。

これに対して、Yは、「建物の登記をしていないXは、所有権に基づく返還請求権を行使することができない」と主張して、明け渡しを拒んでいます。

そんな、事案です。

議論の、大まかな流れをみておきましょう。

まず、、

Xは、本件建物の所有権をAから取得しています(555条176条)。

(売買)
第五五五条 売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる

(物権の設定及び移転)
第一七六条 物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる

ところが、Xは、未だ、所有権移転の登記をしていません。

177条によれば、登記を未了のXは、建物所有権の取得を、「第三者に対抗することができない」ことになります。

(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第百七十七条  不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 (平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない

177条の公示制度とは、

「物権の設定や変動があったらみんなに分かるようにその旨登記をして公示してくださいね、登記をしないでいると権利を第3者に対抗できなくなりますよ」というものです。

逆にいえば、登記をしてしまえば権利を第3者にも対抗できるようになってもう安心!といえます。これにより、安心して不動産取引をすることが可能となり、円滑な不動産取引が実現されるのです。

条文上は「登記をしないと権利を第3者に対抗できない」となっています。つまり、登記をしないと権利主張できなくなるというペナルティーを与えることで、半ば登記を強制しているのです。

登記をするには登録免許税などお金がかかるので、そうでもしないと誰も登記なんてしないからです(^.^;

で、177条によれば、Yが同条の「第三者」にあたるとすれば、登記を未了のXは、建物所有権の取得を、Yに対抗することができないことになります。

逆に、Yが同条の「第三者」にあたらないとすれば、Xは、登記がなくても、建物所有権の取得を、Yに対抗することができることになります。

では、「すでに賃貸借契約が終了していて正当な権原なく建物の占有を続けるY」が、177条の「第三者」にあたるのでしょうか?今回のテーマですね。

判旨をみてみましょう。

判旨

「原審の認定した事実によると、Yは結局何等の権原なくしてX所有の本件家屋を占有する不法占有者だということになる。不法占有者は民法第一七七 条にいう「第三者」に該当せず、これに対しては登記がなくても所有権の取得を対抗し得るものであること大審院の不変の判例で、当裁判所も是認する処である。されば、原審が登記の点について判断する処なくしてXの請求を是認したのは結局正当で」ある

Yは、「何等の権原なく、本件建物を占有する不法占有者」であり、177条の「第三者」にあたらない。

それゆえ、Xは、Yに対して、登記がなくても、建物所有権の取得を対抗することができる。

そう、いっています。

177条の「第三者」については、前々回と前回で、「背信的悪意者」について、みてきましたね。

復習もかねて、丁寧にみておきますと・・

そもそも、「第三者」とは?

文字通りに解釈すると、当事者以外はすべて第三者です。

でも、通りがかりのなんの関係もない人まで「第三者」にあたるという必要はありませんよね。

未登記なので通りがかりの人に権利を対抗できない?通りがかりの人に土地の所有権を対抗できないから土地を明け渡す?そんなわけないですよね。

そこで、「第三者」とはすべてのひとではなく、限定的に解釈する必要があります。

それを判例は、

当事者もしくはその包括承継人にあたらない者で、

登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者

といっています。

小難しい言い回しですね。もっと分かり易い言葉で言えよ!そうツッコミたくなりますね。。

上の事例でいうと、Yが「第三者」にあたるためには、「Xの登記の欠缺(登記を欠いていること)を主張する正当な利益を有する者」である必要があるわけです。

では、「正当な利益を有する者」とはどんな人をいうのでしょう?

わかるようでよくわからない表現ですよね。

正当な利益を有する者」とは、、

これは、判例の蓄積によりそういうものかとわかる、そんな性質のものです。

では、判例はなんといっているのか?

視点として、

  • 客観的要件(第三者とされる者の有する権利もしくは法的地位
  • 主観的要件(その主観的態様

という、区別された基準を用いることが、提唱されています。

で、まず、

「登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者」には、客観的要件(第三者とされる者の有する権利もしくは法的地位)として、「正当の権原に因らずして権利を主張する者」はあたらない、とされています。(大連41年12月15日)

具体的には、「不法占拠者」はこれにあたらない、とされます。(大判大正9年11月11日)

「不法占拠者」は、その占有の継続を、法的に承認されるような地位にありません。物権取得者の登記不存在を主張させて、明け渡しの拒絶を認めてあげる必要などない。そういうことが、できそうです。

本件Yのような、「無権利者=不法占有者」も、この客観的要件を充たさず、「第三者」にあたりません。

今回の判例も、

不法占有者は民法第一七七 条にいう「第三者」に該当せず

といっていましたね。

なお、客観的要件を充たす者について、その次に問題となるのが、主観的要件(その主観的態様)になります。

そこでは、前々回と前回でみたように、「背信的悪意者にあたるか否か」が問題となります。

つまり、「背信的悪意者」の議論というのは、客観的要件として「正当な権利を有する」と認められた上で、しかし、主観的要件(その主観的態様)に問題ありとして「第三者」該当性を否定されることになる。そういう処理の手順をとることになります。

まとめ

177条の「第三者」にあたるか否か。

その判断に際しては、

・客観的要件(第三者とされる者の有する権利もしくは法的地位)と

・主観的要件(その主観的態様)という、区別された基準を用いることが、提唱されています。

本件Yのような「不法占有者」は、客観的要件を充たさず「第三者」にあたらない、とされてしまいます。

客観面で否定されてしまうので、もはや、主観的態様は問題とする必要ありません。

背信的悪意者の議論をするまでもなく、「第三者」該当性を否定されてしまうわけです。

今回は、以上です。

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