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詐欺における善意無過失の第三者の登記の必要性(最判昭和49年9月26日)

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詐欺取り消し

民法判例百選Ⅰ[第8版] No.23
詐欺における善意無過失の第三者の登記の必要性
(最判昭和49年9月26日)

今回は、96条3項の「善意の第三者」が保護されるためには、登記を備えることまで必要か?

というお話です。

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(詐欺又は強迫)
旧第九十六条  詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2  相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3  前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、「善意の第三者」に対抗することができない

新法第九十六条  詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2  相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3  前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

これは、《取消に利害関係に入った第三者》の事案ですね。

いきなり、判旨をみてしまいましょう。

判旨

民法九六条一項、三項は、詐欺による意思表示をした者に対し、その意思表示の取消権を与えることによつて〈詐欺被害者の救済をはかる〉とともに、他方その取消の効果を「善意の第三者」との関係において制限することにより、〈当該意思表示の有効なことを信頼して新たに利害関係を有するに至つた者の地位を保護しよう〉とする趣旨の規定であるから、右の第三者の範囲は、同条のかような立法趣旨に照らして合理的に画定されるべきであつて、必ずしも、所有権その他の物権の転得者で、かつ、これにつき対抗要件を備えた者に限定しなければならない理由は、見出し難い

本判例は、一般論として、登記不要といっています。

判例は、登記不要説といってよいようです。

2020年4月1日施行の改正民法にも、登記への言及はありません。

[現行民法96条]

(詐欺又は強迫)
第九十六条  詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2  相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3  前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。

[2020年4月1日施行の改正民法]

新法第九十六条  詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2  相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3  前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

[2020年4月1日施行の改正民法]では、第三者が保護されるには、「善意かつ無過失」を要求されています。

判例は、登記不要というだけです。

なぜ、[2020年4月1日施行の改正民法]では、第三者が保護されるには、「善意かつ無過失」を要求されているのでしょう?

なぜ、[2020年4月1日施行の改正民法]も、判例も、登記は不要としているのでしょう?

前回の《94条2項類推適用》で確認しました。

「第三者の取引の安全保護」といえば、忘れてはいけない視点がありましたね。

そう。「本人の帰責性」との比較衡量です。

「第三者の取引の安全」を図るための「第三者の保護要件」の内容は、「本人の帰責性」の大きさとの比較衡量により相関的に決まるといえます。

例えば、「本人の帰責性」が大きい場合には、「第三者の保護要件」は緩やかでよい、といえます。逆に、「本人の帰責性」が小さい場合にば、「第三者の保護要件」は厳しくなる、といえる。

これを標語的にいうと、

「本人の帰責性」と「第三者の取引の安全の要請」とを天秤にかけて判断する。

でしたね。

この視点から、[94条2項]と[96条3項]さらに[545条1項但書]の、「第三者の保護要件」の違いについて、それぞれの利益状況を見比べながら、まとめてみてみることにしましょう。

94条2項/96条3項/545条1項但書/の「第三者の保護要件」の違い

(虚偽表示)
第九十四条 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

[2020年4月1日施行の改正民法]
(詐欺又は強迫)
新法第九十六条  詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2  相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3  前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

(解除の効果)
第五百四十五条  当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない
2  前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。
3  第一項本文の場合において、金銭以外の物を返還するときは、その受領の時以後に生じた果実をも返還しなければならない。 
4  解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。

それぞれの場面における、「第三者の保護要件」は次のようになっています。

[94条2項]→善意のみ

[96条3項]→善意かつ無過失

[545条1項但書]→登記

なぜ、このような違いが生じるのでしょう?

そうですね。

「第三者の保護要件」の内容は、「本人の帰責性」の大きさとの比較衡量により相関的に決まるでしたね。

では、各条文における、「本人の帰責性」の大きさとの相関関係で、それぞれの「第三者の保護要件」をみてみましょう。

[94条2項]

ここでは、本人は通謀虚偽表示の張本人ですね。「本人の帰責性」はとても大きい。

とすれば、「第三者の保護要件」は緩やかでよいといえます。「第三者の取引の安全」のほうを重視するべきだと。そこで、「第三者の保護要件」として「善意のみで足りる」と。

[96条3項]

ここでは、本人は詐欺の被害者です。可哀想といえば、可哀想です。ただ、騙された側にも落ち度はあるのですね。帰責性はあると言われてしまいます。といっても、通謀虚偽表示の張本人と比べたら、「本人の帰責性」は小さいといえる。

とすれば、[94条2項]と比べて「第三者の保護要件」は少し厳しくするべきだ、といえます。「本人側の保護の要請」もあると。そこで、「第三者の保護要件」として「善意かつ無過失を必要とする」と。

[545条1項但書]

ここでは、「本人の帰責性」はあるの?ってくらい小さいです。解除の場面です。本人が解除するというのは、相手方が履行期になっても代金を支払わない、催告しても支払わない。で、本人は解除するわけです。「本人に落ち度」ありますか?あえて言えば、そんな相手方を信頼して契約を結んだことに帰責性がある、という程度でしょう。あるとしても、「本人の帰責性」はとても小さいです。[96条3項]と比べてもさらに小さい。

とすれば、「第三者の保護要件」はさらに厳しくするべきだ、と。「本人側の保護の要請」が大きいと。そこで、「第三者の保護要件」として「登記を備えることを必要とする」と。

(なお、解除の場合、第三者の主観は考慮できません。善意や無過失を要件とすることはできません。なぜなら、解除原因を第三者が知っていたとしても、例えば、相手方が代金の支払いを遅延していたことを第三者が知っていたとしても、解除されるか否かは第三者には分かりません。遅れたものの支払うかもしれません。代金支払いの遅延を知っていたから保護しない、なんていえない。善意を要件とするなんていえないのです。そこで、残された要件といえば、”登記を備えること”しかないのですね。)

(また、判例は、この「第三者の保護要件」としての登記を、”対抗要件としての登記”としているようです。でも、ここは177条の適用場面ではありません。《詐欺取消の第三者》も《解除の第三者》も、177条の適用場面ではない。177条というのは、「登記をしないでいると権利を対抗することができませんよ、先に登記されたら権利を対抗できなくなってしまいますよ。」そう脅かして、間接的に登記を強要する規定です。そうしないと、誰も登記なんてしないのです。お金かかるから。。登記させて、所有権等の所在を一応明らかにして、不動産取引の安全を図る。それが177条です。「登記をしないでいるとペナルティーがあるよ。」そんなことをいえるのは、「登記ができる状態にある」からですね。「登記できるのに登記しないと・・」という状態。この点で、《取消》や《解除》の本人は、まだ、「登記できる状態」にありません。「取り消したら登記を取り戻せる状態になる」。「解除したら登記を取り戻せる状態になる」。だから、《詐欺取消の第三者》《解除の第三者》の場面では、177条の適用となるのです。「本人は所有権の復帰を登記できるのに登記しないでいると第三者に対抗できなくなるよ」といえる。「第三者は登記しないでいると所有権取得を対抗できないよ」といえる。177条の適用場面ですね。にもかかわらず、判例は、《解除の第三者》について、”対抗要件としての登記”を要件としています。その意味するところは明らかではありません。僕のおもうには、第三者は登記をしないと保護されない、本人に権利を対抗できない、それはつまり”対抗要件”でしょ。そんな意味なのかな、とおもっています。私見です。。ここの登記は、一般に、”権利保護資格要件としての登記”といわれています。)

まとめ

ということで、今回は、《詐欺取消の第三者の保護要件》でした。

[94条2項]や[545条1項但書]と比べながら押えておくことをオススメします。

(上記のように、《取消》《解除》の第三者の事案は、177条にのせて処理します。物権のNO.55~56で扱います。)

今回は、以上です。

これを書いたひと🍊

 

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