物権変動の時期

物権変動の時期〜意思主義/契約成立時説(最高裁昭和33年6月20日)

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物権変動の時期

民法判例百選Ⅰ[第8版] No.52
物権変動の時期~意思主義
(最高裁昭和33年6月20日)

今回は、「物権変動の時期」です。

ここも諸説あるところですけど、判例でいきましょう。

実務は判例で動いています。判例を100%にすること。その一点に集中することを、強くオススメします。

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176条 意思主義

で、判例の立場はというと・・

判例は、条文を重視します。当然です。裁判所の役割は、法律の適用と解釈です。法の創造は、立法機関である国会の役割。裁判所は、国会で制定された法律、その条文を尊重し重視する。民主的な基盤をもたない司法のあるべき姿として、そういうことになります。

で、条文はなんといっているか?

(物権の設定及び移転)
第百七十六条  物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる

176条《意思主義》ですね。

物権変動は、意思表示のみによって生じる」。そういっています。

その『意思表示』とは、「物権変動の原因となる契約成立の意思表示で足りる」とされています。つまり、それとは別に、「格別な、物権変動そのものに向けられた意思表示」のようなものは、不要とされています。《物権変動独自性否定説》です。

契約成立時説

この立場を前提とした上で、『売買における所有権の移転時期』について、「売買契約成立時に直ちに所有権が移転する」これを原則とするのが、《契約成立時説》です。

売買契約というのは、所有権の移転を本質的な内容とする契約です。売買契約が有効に成立している以上、特別な事情のない限り、即時の所有権移転を否定する理由はないといえます。

(売買)
第五百五十五条  売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

判例は、原則として《契約成立時説》にたった上で、

契約成立時に、所有権が移転することに障害があるような場合〉は、その障害がなくなった時に、所有権は即時に移転する

といいます。

例えば、不特定物の売買においては、目的物が特定した時に、所有権は移転します。目的物が未特定のあいだは、所有権の移転のしようがありませんよね。

また、特定物の他人物売買においては、売主が所有権を取得した時に、所有権は即時に買主に移転します。特別の意思表示を必要としません。

(他人の権利の売買における売主の義務)
第五百六十条  他人の権利を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。

判例は、また、

〈所有権移転時期に関する特約がある場合〉には、特約で定められた時期に所有権は移転する

としています。

私的自治の原則、契約自由の原則のもと、当事者の意思に沿った所有権移転時期に関する特約は、当然、認められます。

では、今回の判旨を、みてみましょう。

判旨

売主の所有に属する特定物を目的とする売買においては、特にその所有権の移転が将来なされるべき約旨に出たものでないかぎり、買主に対し直ちに所有権移転の効力を生ずるものと解するを相当とする(大審院大正二年一〇月二五日言渡判決、 民録八五七頁参照)。そして原審は、所論(丙)の建物については、売主(上告人)の引渡義務と買主(被上告人)の代金支払義務とは同時履行の関係にある旨を判示しているだけであつて、右建物の所有権自体の移転が、代金の支払または登記と同時になさるべき約旨であつたような事実を認めていないことは、原判文上明白であるそれ故、原判決には、所論のような違法はなく、論旨は採用できない。

青字の部分《契約成立時説》ですね。赤字の部分は、〈所有権移転時期に関する特約〉についての言及部分です。「そのような特約があったという事実はない」そういっています。

まとめ

『売買における所有権の移転時期』について、「売買契約成立時に直ちに所有権が移転する」これが《契約成立時説》でした。

契約成立の意思表示のみで、所有権が移転します。口約束のみで、所有権が移転してしまう。

これは、とりわけ不動産などの売買では、当事者の通常の意思に反するのではないか?そんな批判があります。

でも、それは、当事者の意思の解釈の問題です。不動産の売買契約などでは、当事者は、慎重に契約成立の意思表示をするのが通常です。口約束だけで不動産の売買契約を完結させるのは、普通ではありませんよね。契約が成立するのは正式に契約書を作成した時とか、所有権は代金支払時に移転する旨の特約をつけるとか。。これらは、契約の性質や取引慣行を考慮した上での、当事者の意思解釈の問題だ、といえます。

つまり、

「原則、売買契約成立時の所有権移転としつつ、当事者の意思に沿った所有権移転時期に関する特約の存在を認めることで、事案にそくした妥当な解決を図るべきである」

そうまとめることができそうです。

今回は、以上です。

これを書いたひと🍊

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